最近洋楽を聴き始めたけど、どうせならリスニング力アップに役立てたい。
発音記号や音声変化(リエゾン)を学ベル参考書はこなしたものの、発音はまだまだだし、聞き取れない発音も大量にある。洋楽で何とかならないか。
何とかなりますし、リスニング力もアップします。
洋楽は正しく使えば発音教材で学んだ発音の知識を感覚レベルまで落とし込むのに役だったり、逆に発音記号をこれから学ぶ人にとっては音楽で英語の音を先取りすることによって発音基礎学習が楽になるという最高の効果があるのです。
洋楽学習にはスラングが覚えられたり表現力がつくといった嬉しいメリットもありますが、この記事では発音記号レベル・単語レベルの発音や文レベルでの音声変化、リズムなどの音声処理能力の強化をメインの目的とします。
下記の順で解説していきます。
音声処理力向上をキーワードに読み進めてくださいね。
・なぜ洋楽で音声処理力が向上するのか
・具体的な洋楽学習法
・おすすめの洋楽
なぜ洋楽で音声処理力が向上するのか
洋楽は実際の英会話と違う発音だから聞き取れなくて良い、発音やリスニングの練習にはならない、といった洋楽不要論もありますが、発音基礎を身につけた上で洋楽をトレーニングに組み込むのは確実に有効です。
実際に僕は主に高校生・浪人生を対象に述べ100人以上の英語個別指導に携わってきましたが、洋楽好きの生徒は発音が総じて上手く、試験用のリスニング教材しか使ったことのない生徒よりリスニング力が高いことが多いです。
これは洋楽で音声処理能力が磨かれているため、試験用のリスニング教材でも発音→英文に脳内変換する能力が高く、音声処理力が低い生徒よりもキャッチできる情報量が多いからです。当然語彙・文法レベルや読解力などの意味処理力もリスニング力に寄与しますが、それらが同じである場合はもちろん、多少リーディング試験で劣っている場合でも洋楽好きで音声処理力が高い生徒の方がリスニングで高得点を取ることはざらにあります。
それほど洋楽学習は音声処理力の向上に役立つのです。
まだ洋楽学習に気乗りしない方のために洋楽で音声処理力が向上する理由を3つ紹介します。すでにやる気満々の方は洋楽学習法まで読み飛ばしてくださいね。
リズムが身につきやすい
洋楽学習ではリズムに重要な音節(音楽で言う拍)の感覚が身につきやすいです。
歌なので1語1語に使える時間が決まっているため、歌手と同じ音節数で発音しないと明らかに歌のリズムに乗れず、自分の発音のミスにいやでも気付かされるのです。
例えば1音節のstreetを日本語発音してしまうと5音節になるので、1拍のところに5拍詰め込むことになり、リズムが崩れます。歌のリズムに合わせて発音すると正確に1音節で発音することになるので、自動的にカタカナ発音を矯正することができます。
この音節という英語のリズムにとって大切な要素を無理なく身につけられることにより、洋楽学習は音声処理能力の強化に寄与するのです。
頭に発音が焼きつく
メロディーというのは強力で数年前に聞いた曲でも覚えていることが多いですよね。これは発音記号レベルの発音感覚を習得する際にも非常に役立ちます。
各発音記号の発音方法の知識が頭に入った状態でネイティブ発音が詰まった洋楽を聞くと、大量の発音のサンプルをメロディーの記憶補助効果で頭に蓄積することができるのです。
例えばMariah CareyのAll I want for Christmas is youという日本でも有名な曲には約340語の単語が含まれますが、発音記号レベルの音声(専門用語では音素)が1単語当たり約3音(e.g. all→2, I→1, want→4, for→3)あると仮定すると、1曲で音素が約1000音も出てくることになります。
もちろん重複している音素もあるので、1曲の中に英語の44個の音素全てが使われているとは限りませんが、それでも数曲聞けば容易に全ての発音記号の音声がカバーされ、各音素をいろんな組み合わせで聞くことができるというのが想像できるかと思います。
音素に加えて歌では滑らかに発音するためにステップ2で紹介した発音変化や省略した発音も多用されるので、文レベルでの発音に関しても大量の音声サンプルを頭に入れることが可能です。
このように大量の発音記号レベルでの音声(音素)サンプル、文レベルでの発音変化の音声サンプルをメロディーという強力な記憶力ドーピングで頭にぶち込めることだけを考えても、洋楽学習は音声処理能力の強化に非常に有効だと言えるでしょう。
反復練習が苦じゃない
音楽はそもそも聴く人に勇気や感動を与えたり楽しい思いにさせたり、感情を動かすために作られているので、洋楽は何回も反復して聴くのに最適です。日本の曲でも気に入った曲は何度も聴くことがありますよね。
TOEICや受験用教材などの音源も何回も繰り返して聞けばリスニングに効果的なのですが、ビジネスプレゼンの内容や地球温暖化などの長文音声を100回も聴いてたらさすがに飽きて頭痛がしそうですが、好きな洋楽であれば何度も何度も反復しても苦にならないはずです。
この反復というのは音声処理能力の強化に非常に効果的で、メロディーの効果と合わせて大量の音声サンプルをどんどん頭に蓄積していくことができ、さらに繰り返し聞く度に脳内の音声の精度が磨かれていきます。
反復は何か新しいことを覚える際の基本ですが、洋楽は反復するための強力なモチベーションを与えてくれ、無理なく音声処理能力強化のトレーニングが継続できるのです。
具体的な洋楽学習法
洋楽で音声処理能力が強化できることは何となくお分かりいただけたかと思いますが、洋楽も適当に聞き流して急にリスニングができるようになるほど万能ではありません。
音声処理能力を強化するための具体的な洋楽学習法の指針を示しておきますので、そのまま使ったり自分なりにアレンジしたりして洋楽学習に役立ててくださいね。
まず概要をチェックしておきましょう
1.歌詞・和訳チェック
2.音声を集中分析
3.口ずさんでアウトプット
以上の3ステップで進めます。
ステップ0の準備段階として、学習用に使う曲を通学・通勤中、ジョギング中、洗い物をする間など、耳が空いている時間に何回か聴き流しておくと後のステップが3つの学習ステップが捗ります。潜在意識に働いてもらってメロディーを頭に入れておきましょう。
それでは各ステップをそれぞれ詳しく見ていきます。
ステップ1: 歌詞・和訳チェック
ステップ1は音声処理力強化のために洋楽を活用するための下ごしらえです。音声に集中できる環境を作るために歌詞を読めば意味がわかる状態にしていきます。
音声処理力を強化するんだから意味が分かる必要はないんじゃない?と思われた方もいるかもしれませんが、歌詞の意味がわかった状態で音声に集中するのとわからずにスペルだけ追うのとでは効率も記憶への定着度も段違いです。
英会話レッスンで文法も語彙もほとんど分からないけど取りあえず発音だけ真似してみる、という練習を想像すれば何となく発音練習の効果も薄そうなことがお分りいただけるのではないでしょうか。洋楽学習も同じで効果的な活用には意味を理解しておくことが大事です。
では具体的にどうやるのか。
Googleで『"曲名" 歌詞 和訳』と検索すると英語の歌詞と日本語訳をまとめた記事がヒットします。マイナーな曲だと和訳はないかもしれませんが『"曲名" lyrics』と検索すれば英語の歌詞は出てくるはずです。辞書を駆使して意味を分析してください。意味を調べている間にその曲をリピートして潜在意識を活用しても良いかもしれません。
ここで気をつけたいのは日本語訳は歌詞の雰囲気を伝える意訳であることが多いので、あくまで目安として活用して、知らない単語やフレーズがあれば自分で辞書で調べて意味を考える必要があります。
また、洋楽には教科書では習わないスラングがよく登場します。スラングだから覚えなくて良いという意見もありますが、どうせリスニング学習ステップ6・7のネイティブ英語学習ではバンバン出てくるのでついでに覚えちゃうのがおすすめです。無料のUrban Dictionaryで調べれば豊富な具体例とたまに面白い定義でスラング・口語表現を説明してくれてますよ。
単語・フレーズごとの理解に加えて”クリスマスに好きな人を待っている”のような曲の全体像・テーマの把握を意識しておくと理解が深まります。
慣れないうちは完璧な理解を求める必要はありませんが、常に歌詞を理解しようとする心は忘れないでくださいね。
ステップ2: 音声を集中分析
歌詞の意味が理解できたらいよいよ音声に集中して耳を鍛えていきましょう。
歌詞を見ながら
通しで聞く→部分ごとに聞く→通しで聞く
この流れで進めますが、この時に以下の3点に気をつけてください。
・音素(発音記号レベルの発音)
・発音変化(単語同士の繋がり、弱い音、音の消失等)
・リズム(音節やイントネーション等)
歌詞を見ながら通しで聞くというのはやっている方が多いかもしれませんが、重要なのは『部分ごとに聞く』というパートです。通しで聞いてざっくり発音のノリを掴んだら必ず各フレーズごとに音声を分析するトレーニングを取り入れましょう。
具体的には各単語単体での発音記号通りの発音が理解できているか、実際にはどう発音されているか、どのような部分で音が繋がったり弱めに発音されたりしているか、音の強弱やリズムはどうなっているか、ということに着目しながら巻き戻しを駆使して分析していきます。
すっと聞き取れない部分は秒単位で細かく巻き戻し、自分のイメージしている発音と歌手の発音はどこがずれているのか徹底的にチェックしていくわけです。
これほど発音に集中して同じ部分を何回も聞きまくるトレーニングはつらいかもしれませんが、これをやるかやらないかで差がつきます。初期段階で発音を徹底分析して音声を処理する基盤を固めておくと、その後洋楽やその他音声を聞く度に脳内の発音データベースがアップデートされていき、音声処理力が勝手に伸びていく状態を作ることができるのです。
後々楽にリスニング力を伸ばすためにもここは踏ん張りましょう。
ステップ3: 口ずさんでアウトプット
音声分析が終わったら最終ステップとして自分でも口ずさんで音声処理力を確固たるものにしましょう。
ここでも歌詞を見ながら
通しでアウトプット→部分ごとにアウトプット→通しでアウトプット
上記の順で進めて行きますが、余裕があれば最後に歌詞を見ずにシャドーイングする練習も加えても良いかもしれません。
口ずさんでアウトプット練習するメリットは、リズムや発音変化が完全に体得できていないことに気づけるということです。長文リスニング教材を使った学習で、聞き取れるからといってシャドーイングをこなせる訳ではないのと同じです。
聞き取れているなら問題なくね?という反論が聞こえて来そうですが、自分でアウトプットできるようにしていた方がリスニング時、特に洋楽や長文を初めて聞く際の反応速度が圧倒的に速くなります。
リスニングができるけど同じように発音できないというのは、歌詞・スクリプトや文脈、語彙力の助けを借りて聞き取れているだけで、実は純粋な音声を処理できている訳ではないという場合が往々にしてあるからです。
自分でアウトプットできるレベルまで音声処理の精度を高めておくと、リスニングで音声処理に脳のリソースを大量に持ってかれることがなくなるので、語彙・文法力が十分であれば楽に聞き取れるようになります。純粋な音声処理力がないと十分な脳みその資源を意味処理に割けず、苦労することになるのです。
ある程度発音できるようにしておくと後々楽になって、半年後・1年後の自分に感謝されることになりますので、初期段階こそアウトプット練習を徹底しましょう。
上記3つのステップをこなした後はその曲を聞き流しつつ、時々難しい部分を分析し直したり口ずさんだりしてメンテナンスしておくと良いと思います。
続いてオススメの洋楽を紹介して洋楽学習のパートを終えたいと思います。
おすすめの洋楽5曲
洋楽学習パートの締めくくりとして完全に僕の好みでおすすめの5曲を紹介したいと思います。
もちろん洋楽なんて山ほどありますので、すでに聞き慣れた曲や好きな曲がある方はそれを使って上記の洋楽学習法を試してもらえればと思います。
特に好きな曲がないから指定して欲しいという方は今から紹介するおすすめリストの中から選んでそこから洋楽への興味の範囲を広げてもらえたらなと思います。
僕の好みとは言え、一応学習用に聞き取りやすいものを選曲し、スピードの遅い順に並べたので5曲のうち自分のレベルに合いそうなものを試してみてくださいね。全部聞いてみるのもありですよ。
下記おすすめリストです。
1. Back Street Boys - I Want It That Way
比較的ゆっくりめ。歌詞もシンプルでわかりやすく、繰り返しが多いので負担が少なめです。発音がはっきりしているので聞き取りやすく、洋楽学習デビュー曲としては最適。後とにかくカッコいいです。
2.Glee Cast - Don't Stop Believin'
1曲目より少し早い発音だけど聞き取りやすい部類。Glee Castは素晴らしいカバー曲がいっぱいあるので、ぜひ色々聞いてみてください。本家のJourneyと聞き比べても面白いかもしれません。
3.P!nk - Just Give Me A Reason ft. Nate Ruess
上の2曲と比べて少し長めのフレーズが多く、発音変化を聞く良い練習になると思います。声がAwesome。
4.Demi Lovato - Really Don't Care
アップテンポでリスニング学習を始めたばかりだと少し発音が速く感じるかもしれません。ネイティブ英語の速度についていくためのリズム感を養うのにおすすめ。ジョギング中に聞くとテンション上がります。
5.Travie McCoy - Billionaire ft. Bruno Mars
洋楽学習に慣れてきたらラップに挑戦してみても良いかも。かなりレベルは高いですが、歌詞を見ながらでも発音がわかるようになれば普通の会話が簡単に聞こえます。マラソンの高地トレーニングみたいなものです。後Billionaireはふざけてるようで良いこと言ってるので歌詞にも注目してくださいね。
ということで5曲紹介しましたが、このおすすめリストに止まらず気になった洋楽はどんどん聞きまくって脳内発音データベースを拡大していきましょう。
最初は1曲にものすごく時間がかかってしまうかもしれませんが、3日で1曲、1週間で1曲など無理のないペースで楽しみながら洋楽学習を進めてくださいね。
次のステップは?
洋楽学習の魅力が少しは伝わったでしょうか。
発音練習は上達するまで何度も反復する必要があり、なかなか根気のいるパートですが、洋楽という強力な味方がいれば反復練習も次第に楽しくなり、発音・リスニング力がどんどん伸びていきます。
洋楽で英語の音に耳を慣らしつつ、音声付きの長文教材で意味処理力も同時に磨いていくとリスニング力のさらなる飛躍が期待されます。
おすすめ教材やシャドーイング時に気をつけるべきポイントなど、具体的学習方法もまとめてチェックしてリスニングの鬼と化してくださいね。
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